訪問看護物語2

「スーツ姿での旅立ち」

「男として、夫として、人間として立派で尊敬している。今までの恩返しがしたい。

病院にいけば管理してくれるが、本人のわがままは出せない。

だって人前ではいい顔する人だから・・・家で声を出してうなったり、怒ったりは私に甘えてるから。

だから助けてほしい。」涙を流しながら、話すNさんの妻。

Nさん夫婦との出会いでした。Nさんは、末期がん。医療機器をつけての退院。余命宣告1ヶ月。

好きだった椅子に座らせてあげて、手入れの行き届いた庭を見せるんだ。

妻の決心は、そんなささやかな想いからでした。

でもそんな想いとはうらはらに、日毎に変化する体調。
それでも妻は気丈に振るまい、私たちが帰るとき、一緒に外に出て涙を流す、そして笑顔でNさんのもとへ戻る・・そんな毎日でした。

そんな、Nさん夫婦の別れは、突然でした。

最後は妻を抱き寄せ「ありがとう・・・」自ら手を組んで息をひきとったそうです。

日常当たり前だった朝の身支度・・・懐かしそうにYシャツや靴下を準備する妻の表情を今でも鮮明に思い出します。

会社重役だったNさんは、いつも着ていたスーツ姿で旅立ました。

Nさん夫婦との出会いから2週間。

最期に妻から「本当に感謝している。私たちは最後まですがりたい。

そんな時、いつでも傍で相談にのってくれ、すぐに助けてくれるとわかったので本当に心強かった。

いい時の言葉より悪いときの言葉がとても心にくる。

背中をおしてくれてありがとう・・・」私たちに何ができるんだろう・・・

自分たちの無力さに肩を落とすことが度々あります。

それでも私たちは、「その人らしさ」を応援したい。

Nさんの妻の言葉を活力に今日も大好きな訪問看護にいってきます!!